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(4/28 日経夕刊)日本企業の休眠特許活用 米大手、売却元に収入分配

4月28日の日経夕刊に、アカシア・リサーチが日本企業の抱える休眠特許の活用に乗り出す、との記事が掲載されました。

アカシアについては「米ナスダックに上場しており、(中略)200社以上から特許を取得し、ライセンス契約実績も1300件を超すなど豊富な運用経験を持つ」と紹介されており、好意的な書きぶりです。

しかし、このアカシアという会社は、いわゆるパテント・トロールとして有名な会社です。

米RPX社の「2013 NPE Litigation Report」(PDF: 2.3MB)によると、アカシアは2013年に最も多くの訴訟を提起したNPEであり、その数は実に239件となっています。毎週4件以上のペースで裁判を起こしているということです。

日本企業との関係では、アカシアのウェブサイトに株式会社ACCESSが同社の協力を得て、マイクロソフト、サムスン、アップルとライセンス契約を締結することに成功した事例が紹介されています。

また、日本人技術者でアカシアで活躍している方もでてきました。昨年11月にシンガポールで開催された IP Business Congress Asia 2013 では Mr. Hiro Seki という日本人がスピーカーとして登壇しています。この方は、もともと日立の社員で、アカシアに移る直前はルネサスの知的財産権統括部の部長であったようです。お名前からすると、登録番号10033番で弁理士資格もお持ちのようです。

日本企業は多数の特許を取得しているものの、防衛目的で使用する予定がないものや、単に件数を増やす目的で取得しているものもあり、また最近では事業撤退に伴って自社で使用しなくなっている特許も抱えており、それらの有効活用が課題となっています。

今月には、携帯電話事業から撤退したNECが、いまや世界一のPCメーカーとなったLenovo社にモバイル関連の特許3,800件を売却、という発表がありました。(売却額は非公表ながら1億ドル程度とのこと)

少し前になりますが、昨年12月にはPanasonicもカナダのNPEである Wi-Lan社に900件あまりの特許を売却しています。

パテント・トロールについては、そもそもその名称からして悪意がある(そのため中立的にはNPEと呼びます)のですが、夕刊とは言え日経の一面にアカシア・リサーチが好意的に取り上げられるというのは、今後、日本のメーカーが特許を外部に売却することが認められていく兆しなのかもしれません。

他方、文部科学省は国内の大学に対して「大学等は権利譲渡を申し出た第三者が、自ら事業をせず他の事業者に対し法外な対価を要求して権利行使することを専ら業とする者等でないことを確認することが必要である」として、NPEなどに特許を売却しないよう求めており(イノベーション創出に向けた大学等の知的財産の活用方策)、大学保有特許の活用には制約がかけられています。

お金を出してまで買ってくれる第三者があるということは、その特許発明を実施している者がいることが想定されるので、大学がアカシアのようなNPEと協力してライセンス契約を企業に迫るということがあってもいいように思いますが、どうやらそのような行動はお行儀が悪いこととされているようです。

日本では、知的財産創造サイクルは、創造→保護→活用を回していくとよく言われますが、「権利行使」という重要なアクションが抜け落ちています。権利行使がない権利はタダ乗りされてしまいます。事実、大学のように積極的に権利行使しない(できない)主体が保有している特許権については、侵害者のやり得になっているのではないでしょうか。そういう場合に、自ら権利行使することが出来ないのであれば、第三者に売却してその第三者に権利行使してもらうという選択肢は留保すべきでしょう。

シンガポールの IP HUB MASTER PLAN (PDF: 1.5MB) では、Creation(創造)→Protection(保護)→Exploitation の次にEnforcement (権利行使)がしっかりと位置づけられています。特許権があれば避けてくれるだろう、という性善説から脱却し、権利行使によって自らの権利の価値を高めるという行動が求められています。


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