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エリクソンの特許売却について(その1)

日本ではあまり大きく報じられませんでしたが、今月の10日に、エリクソン (NASDAQ:ERIC) がアンワイヤード・プラネット(NASDAQ: UPIP)に2000件あまりの特許ポートフォリオを譲渡することで合意した、とのニュース・リリースがありました。

売り手のエリクソンについては、昨年までソニーと合弁会社で携帯電話事業を行なっていた会社です。スウェーデンのストックホルムに本社がある、従業員10.9万人(2012年9月末)、2012年7-9月期の売上高81億USドル、保有特許数3万件という巨大通信企業です。

他方、買い手であるアンワイヤード・プラネットについては、あまり聞いたことがない会社という人が多いと思います。保有特許数は出願中のものも合わせて2百数十件というエリクソンに比べるとごくごく小さい会社です。この会社は、昨年の4月にソフトウェア事業を外部のPEファンドである「マーリン・エクイティ」に売却するまでは、モバイル関連ソフトウェア事業を行っており、auやSBの携帯電話にモバイル・ブラウザを提供していたので、下記のロゴに見覚えのある人は多いと思います。

ソフトウェア事業の売却に伴い、この会社はそれまでの「オープンウェーブ・システムズ」から現社名の「アンワイヤード・プラネット」に社名変更し、事業内容も「保有特許の活用による収益獲得」に特化したため、2012年4-6月期、7−9月期ともに売上高は実質的にゼロとなっています。

具体的な事業活動としては、(1)2011年8月にアップル社とリサーチ・イン・モーション(ブラックベリー事業をやっている会社)を特許侵害でITCおよびデラウェア州連邦地裁に提訴(ITCへの提訴については、2012年10月に取下げ)、(2)2012年にアップル社とグーグル社を特許侵害でネバダ州地裁に提訴、の2件を手がけています。

上記のような状況であるため、アンワイヤード・プラネットは「パテント・トロール」というありがたくない名前で呼ばれています(記事1記事2)。パテント・トロールというのは、自社では研究・開発等は行わず、もっぱら外部から買い集めてきた特許を積極的に活用して、他社からライセンス収入を得たり、訴訟を行って賠償金を得ることを主要な事業として行う会社の蔑称です。上品な言い方としては、Non-Practicing Entity (特許を実施しない事業体; NPE)またはPatent Assertion Entity (特許主張事業体; PAE)などがあります。

そんな(評判のよろしくない)会社にエリクソンのような大企業がなぜ特許売却で合意したのでしょうか。

それを考えるために、(その2)ではエリクソンは何を譲渡して、その対価として何を受け取ることとなっているのかを見て行きたいと思います。取引条件を見ていくと、本件は売却という形式になっていますが、実質的にはランニング・ロイヤルティに近いものになっていることが分かります。


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