イギリスのパテントボックス:対象となる特許は?
2013年4月から欧州の大陸各国に続いてイギリスにもパテントボックス税制が導入されます。
対象となる特許に係る所得について法人税率を10%に軽減することにより、研究開発型企業がイギリスから出ていくのを抑えるとともに、海外からの企業の進出を図る目的で創設されるものです。
このパテントボックス税制の対象となるのは、以下の特許またはその独占実施権を有している在英国企業です。独占実施権については、少なくとも全国的(country-wide)である必要があります。
- 英国知的財産庁(the UK Intellectual Patent Office; UK-IPO)から受けた特許
- 欧州特許庁(the European Patent Office; EPO)から受けた特許
- 特定の欧州経済領域(European Economic Area; EEA)の国から受けた特許
上記のうち3番目の特定国については、以下の13か国が明示されています。これらの国の特許を有する在英国企業についても、イギリスの法人税についてパテントボックス税制を選択することが可能となります。なお、これらの国の実用新案権またはこれに類似する権利はパテントボックス税制の対象とはなりません。
オーストリア | ブルガリア | チェコ | デンマーク |
エストニア | フィンランド | ドイツ | ハンガリー |
ポーランド | ポルトガル | ルーマニア | スロバキア |
スウェーデン |
以上のとおり、特許(patent)のみが対象となっているため、実用新案(utility model)、意匠(design)、商標(trademark, servicemark)、著作権(copyright)などはパテントボックス税制の対象とはなりません。
また、特許に類似する以下の権利または企業についてもパテントボックス税制の対象とされています。
- 医薬品の補充的保護証明書に関する規則(理事会規則(EC) 469/2009)および農薬の補充的保護証明書に関する規則(理事会規則(EC) 1610/96)に基づく補充的保護証明書(Supplementary protection certificates; SPC)
- 1977年品種法(the Plant Variety Act 1977)の第一部(Part 1)に基づく育成者権(plant breeders' rights; PBR)
- 欧州共同体品種権規則(理事会規則(EC)2100/94号)による共同体植物品種権(community plant variety rights; CPVR)
- 欧州委員会規則 (EC) 726/2004または人用医薬品に関する指令 2001/83/EC による人用医薬品(medicinal products)の市販認可(marketing authorisation rights)を受けていて同規則および同指令による保護(marketing protection)を受けている企業
- 小児用医薬品規則 (EC) 1901/2006の38条により欧州委員会規則 (EC) 726/2004または人用医薬品に関する指令 2001/83/ECに基づく市販認可を受けていて保護期間内である企業
- 規則 (EC) 141/2000により排他的市販期間(a period of marketing exclusivity)にある希少医薬品(orphan medicinal products)に指定されている医薬品
- 指令 2001/82/EC の保護期間内にある動物用医薬品(veterinary medicinal product)
- 規則 1107/2009 の59条によるデータ保護期間の利益を受けている農薬(plant protection products)
医薬品関連についてはやや細かい規定ぶりとなっていますが、UK特許、EU特許または上記各国の特許を用いた製品の製造、販売、輸出をイギリスで行なっている場合には、本パテントボックス税制を適用することにより、税金費用を大幅に削減できる可能性がありますので、対象特許の在イギリス法人への移転や独占的ライセンスの付与を検討する必要があります。
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