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最近の移転価格税制に関する新聞記事から

8月3日の日経新聞によると、日本企業が進出先のアジア各国で移転価格税制の適用を受けるケースが増えているとのことです。

日本企業が進出先のアジアで思わぬ課税強化に直面する例が増えている。日本の当局にも課税されて二重課税となり、司法の場での紛争となるケースも少なくない。アジア諸国の税務当局が日本企業に照準を合わせているのはなぜか。

課税を巡る紛争で、企業が予期せぬ支出を迫られる税務リスク。アジアに進出した企業の間でそのリスクが高まってきたのは、新興国が自国で活動するグローバル企業の課税に目覚めたからだ。

インドネシアでダイハツ工業が約58億円の追徴課税を求められて現地税務当局と争っているほか、中国でも移転価格税制の課税が強化されていて、2010年の1件当たりの平均追徴税額は2006年比で4倍となっているようです。

移転価格税制といえば、今までは海外へ生産拠点を移した企業が、日本の税務当局から「海外へ所得を移転した」として申告漏れを指摘されるケースが典型的でした。日本の税務当局から指摘を受けたケースには、最近は以下のようなものがあります。

  • 2012年7月、東京エレクトロン、東京国税局、6年間で143億円、異議申立て
  • 2012年6月、クボタ、大阪国税局、6年間で48億円、異議申立て
  • 2012年5月、日本ガイシ、名古屋国税局、5年間で160億円、異議申立て
  • 2012年2月、東洋炭素、大阪国税局、6年間で12億円

従来は国税局の課税処分に対して異議を申し立てるケースは少なかったのですが、最近は当たり前のように異議申立てがなされています。(2008年10月のアドビ事件東京高裁判決が税務当局に対して厳しいものであったことが影響していいると思われます)

2006年6月に1223億円の申告漏れを指摘された武田薬品のケースでは、大阪国税局が異議申立てを受け入れて、977億円を取り消す決定を2012年4月に行ないましたが、武田薬品はさらに残りの246億円についても取り消しを求めて、5月に大阪国税不服審判所に審査請求を出して争っています。

移転価格税制でしばしば問題となるのは、現地子会社が日本本社に対して支払っている特許使用料(こだわる人は「実施料」と言いたいところだと思いますが、以下新聞記事に合わせて「使用料」とします)やブランド使用料が第三者間取引価格になっているかどうか、ということです。

日本の主要企業130社がアジアで稼いだ営業利益は、11年3月期に日本国内の利益を上回り、過去最高となった。海外での稼ぎの一部を特許使用料などとして本社に吸い上げて日本国内に還元している。アジア各国の税務当局から見れば、本来は自国の税収を生む利益と映る。

このような新聞記事の書き方だといかにも「特許使用料」名目で利益を本社に吸い上げているように見えますが、海外子会社が事業活動に当たって本社の技術やブランドを使用して利益を上げているのであれば、当然その対価は支払う必要がありますので、「吸い上げて」というのはミスリーディングと思われます。

通常、日本本社が研究開発費や広告宣伝費を負担して技術開発やブランド構築を行なっていることを考慮すれば、特許使用料やブランド使用料を子会社から徴収することは何ら問題ではないはずです。ただし、その対価が妥当であることを日本の税務当局にも進出先の国の税務当局にもきちんと説明できるようにあらかじめ社内で資料を用意しておくことは重要です。

記事では比較的税務対策が手薄な企業も多数海外へ進出していることがリスクとして挙げられています。特許や商標といった無形資産の使用料(ロイヤルティ)の授受を海外子会社と行う場合には、その金額の算定をどのようにして行ったか、第三者間取引価格として合理的な価格となっているかどうか、について対外的に説明できる資料を作成しておくべきでしょう。

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